「仁淀川」良かった。

 数日前に、宮尾登美子の「仁淀川」を読み終わりました。
 読みながら何度も号泣したんだけど、綾子に感情移入しすぎというか、自分を重ねていたようです。
 我が儘で依存心が強く、臆病なのに変なところは鈍感で、実力もないのに自分は何でも出来ると思ってる。
 自分とそっくりな部分のある綾子が心を痛めたら、当然西村さんにも同じような痛みが感じられるのは当然と言えば当然。同じ感覚なら、痛さを感じる部分も一緒。
 母親喜和の死で受けた綾子の呆然とした感じや、どうしようもない悲しさは本当に辛かった。
 ただ、その箇所を読みながら頭にあったのは親ではなく、好きな人の事だけど。
 それ故に号泣に拍車が掛かったんだけどさ・・・
 出来たら好きな人を失いたくはないし、出来たら彼より先に死にたい。
 綾子は両親を失ってから強くなったけれど、西村さんはたぶんそれに耐えられないから。綾子よりももっと打たれ弱いと思います。
 
 西村さんは長生きする予定なので(笑)それよりも長生きして貰おうと思ってる。それで自分が先に死んだら、ちょっとでいいから泣いて貰いたい、とも考えてたりします。
 だけどあの人、西村さんがいなくなったら泣くかなぁ・・・微妙だなあ(苦笑) 続きを読む>>

「春燈」も良いね。

 こんにちは。睡眠が足りてない西村さんです。

 いやあ、昨夜は22時半にはお布団に入ったんですけどね、うっかり読みかけの宮尾登美子著「春燈」を読み出したら止まらなくて、結局最後まで読み終えたのが朝の5時・・・
 で、ようやく寝る気になってうとうとしたところに地震があったので、実質2時間くらいしか寝てません。おかげで眠い。

 「春燈」は「櫂」から続く、宮尾登美子の自伝的小説。
 「櫂」は母親の喜和の視点でしたが、「春燈」は娘の綾子の視点。なので「櫂」の後半と「春燈」の前半は時期が重なるけど、少々取り上げられる出来事やそれに対する感想が違う。
 「櫂」では長々と綴られていた引っ越しや離婚までの話が「春燈」ではほんの少し。逆に「春燈」では山の別荘について書かれていた部分も「櫂」では触れられていなかったり。
 程々の作家が書いたらきっと、どちらの作でもそれぞれ出来事を逐一書き込んでしまうと思う。けどそうはせず、主人公の心に留まった物事だけを連ねているところに、それぞれの個性を感じたりしました。
 喜和から見たら綾子は守ってやらなくてはならない、嫌われたくない娘なのに対し、綾子から見ると逆に邪魔に思われているのかも、と互いが互いに捨てられたくないと感じている辺り、両作を読んで良かったと思う。
 どちらか片方だけだったら、どうにも切なさ過ぎるから。 続きを読む>>

宮尾登美子「櫂」読んだ。

 フランスパン焼いたり、シュトーレン焼いたり、本読んだり、友達と遊んだりしてました。
 こんばんは、西村さんです。
 ふと手を出した宮尾登美子が面白くて、「天涯の花」に続けて「櫂」を読んでしまいました。
 ミステリじゃないから殺人事件も密室も出てこないし、かといってラブラブなホモカップル(・・・)も出てこないのに、読むのが止まらなかった。
 特に「櫂」はちょっとだけ、と思って読み始めたら2時間とか経過して吃驚。こんなに止まらない本は久しぶりかも知れない。
 何でですかね、文章は凝ってないけど品があって、でも読みやすいからかな。

 フェミニストの西村さんとしては、宮尾登美子の書く主人公みたいに人生や男に流されてただ堪える、っていう考え方は我慢ならないはずなのに、不思議なくらいイヤじゃない。
 川端康成「雪国」なんか大嫌いなんだけどねぇ・・・川端康成の書く人と違って、宮尾登美子の場合は堪え続ける主人公の芯が強いのもあるし、彼女らにとって堪える事=媚びる事、ではないからだと思う。
 自分が悪いから耐える、でもなく、また嫌われるのが怖いから耐える、でもない。耐えるのは台風のように一過性の物で、耐えて過ぎてしまえば青空が出て、また何とか局面を変える事が出来るかも知れないから。
 つまりは、台風=男であり、怒る男を斑のある物、それでいて気まぐれだからそのうち気が変わる、と判断してる。耐える振りして実は良いように転がしてるんじゃないかしら。

 「櫂」は、好きになって嫁いだ岩伍を至らずに怒らせてしまう所や、浮気をして戻ってこないのを嘆く所がどうにも切ない。
 最後の方で主人公の喜和は50歳くらいにはなっているのだけれど、文章の端々から連れ添った夫婦だから未練がある、ではなく、好きだから戻って来て欲しい、という感情が読みとれる。
 そう言う部分が可愛くて、それ故に切ない。
 なので、喜和を離縁しようと考え、思いとどまった岩伍が、結婚したばかりの頃「この娘を貰って良かった」と感じたことを思い出すところに号泣。
 昔の話だから、好きじゃなくても結婚する事もあって、岩伍はそうだったのかな、と前半は思っていたからね。
 号泣するのは自分の感情を重ねるからだろうけれど、だからこそラストは幸せで終わって欲しかったのにな・・・ 続きを読む>>

懐かしい「ティー・パーティー」シリーズ。

 この間実家でノートを発掘した時、一緒に古い本も持って帰って来た。
 で、久々に読んだらあまりに荒唐無稽、しかし面白いので立て続けに読んでます。
 読んでいるのは皆川ゆか「ティー・パーティー」シリーズ。
 最初の2冊を小学校の時の親友に借りて以降、ずっと読んでいた作家さんですが、この10年程は「ガンダム」関係の仕事ばかりされていたようで、オリジナルの小説も殆ど書いていないみたい。ずっと公式サイトも更新されていなかったのですが、さっき覗いたら再開されていて、しかも改名してるし!(字面だけだけど)
 うーん、何だかちょっと寂しい・・・

 読み返している小説は「ティーンズハート」のシリーズなので、今読むとかなり平仮名が多い。
 恋愛モノが大半の「ティーンズハート」において超常現象だったりSFだったり転生だったりを描いている。今で言うならライトファンタジー。こういうネタは現在ではそう珍しくもないかも知れないが、それでもかなりの情報が詰め込まれていることに、読み返して吃驚。
 ちなみに西村さんが生まれて初めて結界だの安倍晴明だの式神だのを知ったのはこの小説。
 本来カタカナの単語も、あえて登場人物の台詞に組み込んでひらがなで発音させているのは、ターゲットの小中高生が取っつきやすいようにと言うおそらく作者の工夫。

 以前、一度だけ某イベントで皆川ゆかさんご本人とお話したことがあります。
 その時「ティー・パーティー」の次のシリーズ「運命のタロット」が波に乗ってきていた頃だったのだけど、「ホワイトハート」も既に創刊されていたので、「『ホワイトハート』で出された方が、読者層も合って良かったのでは?」(実際「ホワイトハート」に移った作家もいた)と尋ねてみたのです。そしたらね、それでは意味がない、「ホワイトハート」には他に似たようなものを書ける作家がいて、そういう作家がいない「ティーンズハート」だから意味がある、といったことを言われました(詳しい台詞は流石に覚えてないんだけど)
 なんかその気概に感激したし、確かにそうだと思ったから、余計にもっと色んな人に読んで欲しかった。
 実際はティーンズハートは先細りし、廃刊になってしまいましたが、今読んでも全然遜色ない話ばかりなので、もっと読まれて良い作家だと思ってます。

 改名は新刊が出たのが機のようですが、今までのライトノベルとは違う方向に行かれたようで、この方の性格や文章から行くとそっちの方が良いのかも。
 近いうちに読んでみようかなあ。 続きを読む>>

また「うしおととら」を読み返し。

 昨日は本を売り払ったけど、作業自体はたった2時間程度で完了。
 しかも西村さんは残す物をチェックしたくらいで、積み込みの手伝いもしてないのに凄く疲れた。
 疲れていたのに、お風呂上がりにふと藤田和日郎「うしおととら」を読み出す。
 気がついたら貪り読んでいて、夕ご飯を軽く食べた後も貪り読んでいて、午前2時とかになった・・・バカなのか、自分。
 で、今日は昼くらいに起きて、それからずっと続きを読んでいて、1日が終わった。
 ホントに1日が終わった。
 読み疲れて夕方1時間くらい昼寝したのと、夜TVドラマを1時間観た以外、ホントにずっと読んでた。
 完全にバカだと思った(苦笑)
 でもおかげで全33巻読了。 続きを読む>>

本との別れのこと。

 本、処分しました。

 午前10時半に実家に行き、処分する本の入った段ボール、それとCDの入った段ボール等を発掘。
 お世話になった古本屋さん「どーなつ書店」さんは予定通り11時くらいに1人で来訪。
 思ったより若い男の人でした・・・古本屋さんというイメージで、勝手におじさんかと思ってたよ。西村さんよりもきっと若い。体型、雰囲気ともに荒川良々に似てた(笑)
 早速部屋に残っていたコミックスや雑誌の査定を開始。どんどん床に積み上げていく。
 雑誌は有栖川センセが出ている物に関しては残すつもりで、元々それらは別にしていたのだけれど、もしかしたら混ざっているのかも知れないのでその点をお願いしたら、ちゃんとはじいてくれた。
 文庫は作家別では皆川ゆかだけ残す事にした。あとは気に入っている物以外は涙を飲んで処分。ホームズも処分しちゃったよ。
 で、コミックスの隣に収まっていた同人誌を見て、「こちらは残して良いんですよね」と言われた。
 え?ってことは、それも引き取れるの??
 一般流通している物品のみだと思っていたのでお願いしなかったのですが、同人誌もOKらしい。
 ならば、と全部お願いする。
 他にも古いCDや弟の部屋から出てきたスーパーファミコンのロム、セガサターンの本体なども引き取って貰う。
 正午くらいまで掛かって査定完了。
 そこから車に本を積み込む積み込む。しかも本をそのまま座席に載せている!段ボールとかに詰めないのかっ(笑) 続きを読む>>

「びっくり館の殺人」と子どもの読書論

 図書館で借りた、綾辻行人「びっくり館の殺人」読み終わりました。
 <かつて子どもだったあなたと少年少女のため>のレーベルなので、活字は大きく、ひらがな多く、ルビ付き。だからあっと言う間(寝る前にベッドの中で読んだ)
 昔々大好きだった、あかね書房のシリーズを彷彿とさせる作りで割と気に入ってます。
 しかし、かつて子どもだったミステリ作家が書いてそのまま本にしているので(普通、子ども向けのミステリ全集などはリライト、ジュブナイルなら子ども向けの作家が書いた物ばかり。その点で、はやみねかおるはかなり異質)<かつて子どもだったあなた>がターゲットで、現在の<少年少女>がちょっと置き去りにされているような気がする。
 特に「びっくり館」は「館シリーズ」であるせいで、下敷きのない子どもが読んだら絶対「?」だと思う。いきなりちょっとだけ登場してくる例の謎の作家も、二時間ドラマだったら明らかに犯人だもん。

 それはまあ差し置いて、怪しい館に怪しい住人(2人だけど)主人公の友達の元気な女の子と、頼れる大人(大学生だけど)黄金の布陣ではあるけれど、主人公も大人も家庭の中での悩みを抱えているというのが暗いなあ。
 あえて暗い部分にも触れることで<現在の子ども>を勇気づけようとしているんだろうけれど、「館シリーズ」らしすぎる燃焼不良な終わり方なので、考えさせられるが故にもう少し掘り下げた方が良かったんじゃないかな(紙面の都合上難しいんだろうけど) 続きを読む>>

どうなんですか?「エンド・ゲーム」

 恩田陸「常野物語」シリーズの3作目、「エンド・ゲーム」をちょっと前に読みました。
 最近ずっと本を読んでいなくて、もうこうなると本を読むこと自体億劫で読みたいという欲求も無くなってくる(自分だけ?)それでも好きなシリーズなので手にしました。
 
お母さんが、会社の慰安旅行先で眠りについて目を覚まさない。
 昔、お父さんがいなくなる前に残した、冷蔵庫に貼られたままになっていたメモ・・・電話番号が書かれた・・・も無くなっている。
 直感的に感じる、「お母さんは『裏返された』んだ」

 ちょっと変わった<能力>を持った常野一族が主人公のこのシリーズ。
 <裏返す>のもそのうちの一つなのだけれど、具体的にどんな能力なのかどうやるのか説明が足りない・・・というか、裏返そうとする相手も敵なのか何なのかわかんない。悪の組織が出てくる訳でも、未確認生命体みたいなのが出てくる訳でもない。
 そもそも、アクションが出てくる訳ではない。
 かといって、精神的な戦いでもない。
 それはまあ良いんです。
 そう言う手法はあっていい。実際人間は自分の全てがわかる訳じゃないんだし。
 でも、能力を持っていることで多少悩む気配はあるものの、その辛さがあまり伝わってこない。どれくらい悩んでるのか解らないし、どのくらいの恐怖かもイマイチ解らない。
 だから最終的に、何を書きたいのかな、伝えたいのかなー、って考えないとならない小説でした・・・(勿論何となくは解るけど、成功しているかどうかという点で)
 シリーズ一番最初の「光の帝国」は短編集ですが、様々な<能力>を通して人間の強さとか弱さとか愛おしさが描かれていてホントに良い一冊。泣ける(短編でこの話の触りも書かれている)
 「蒲公英草紙」はちょっとね・・・と思う部分はある物の、まあシリーズとして問題ないかな。
 でも、これはなあ・・・「常野物語」ってよりも「麦の海に沈む果実」とかに近い、ミステリともSFとも空想ともつかない、そんな話です。

 続きは折りたたんでおきますが、恩田陸ファンには先に謝っておきます。別に嫌いじゃないんですよ、実際買って読んでるくらいだし(笑)  続きを読む>>

祝!「からくりサーカス」完結。

 本日新刊が出て、ついに「からくりサーカス」完結致しました〜ぱちぱちぱち(拍手)
 全43巻、長かった・・・
 しかしこれだけの分量をテンション下げずに描き切る藤田先生は凄いです。
 前巻も前々巻も泣けましたが、この最終巻はもう全ての回で泣いてしまう。嬉しい部分も悲しい部分もボロボロです。
 でも満足満足。漫画はこうでなくっちゃ。
 以下ネタバレ気味で↓ 続きを読む>>

今とあまり差はない、「江戸の性愛術」

 ドモ、相変わらずどーでも良いことに対する探求心だけは強い西村さんです。
 昨夜読み終わったのは、渡辺信一郎「江戸の性愛術」という本。
 江戸時代の遊女の指南書を現代解釈、解説した本なので・・・当然技術書ですよ。性技。
 新聞の書評に、内容が凄くて書けないてなことが書かれていたので、どれだけ凄いんだろう!?と思って読んでみたのですが(笑)別にごくごく当然なことしか書かれてないから、そんなびっくりするほどでも無かったです。
 もともとは無い挿絵も、当時の春画などから探して追加してくれちゃってますから(浮世絵・・・特に春画は一種特異なデッサンを用いていて、他の絵画の技法とは一線を画していると思う。その点でスゴイと思う)まあこれを普通の本屋で売ってしまうって点では凄いかも。
 その上でここまで真面目に解説されると笑えます。あははははは〜
 何でこんなに面白いんだろう。夜中に手を叩いて大爆笑してしまいました。

 残念なのは江戸の遊女屋に受け継がれる指南書ではなく、<江戸時代>なところ。欲しいのは江戸の遊郭の資料がなんだけどなー(江戸が舞台の話書きたい)
 ついでに実践で役立つようなことが書かれてれば良かったんだけど(笑)←この辺が探求型。 続きを読む>>