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「びっくり館の殺人」と子どもの読書論

 図書館で借りた、綾辻行人「びっくり館の殺人」読み終わりました。
 <かつて子どもだったあなたと少年少女のため>のレーベルなので、活字は大きく、ひらがな多く、ルビ付き。だからあっと言う間(寝る前にベッドの中で読んだ)
 昔々大好きだった、あかね書房のシリーズを彷彿とさせる作りで割と気に入ってます。
 しかし、かつて子どもだったミステリ作家が書いてそのまま本にしているので(普通、子ども向けのミステリ全集などはリライト、ジュブナイルなら子ども向けの作家が書いた物ばかり。その点で、はやみねかおるはかなり異質)<かつて子どもだったあなた>がターゲットで、現在の<少年少女>がちょっと置き去りにされているような気がする。
 特に「びっくり館」は「館シリーズ」であるせいで、下敷きのない子どもが読んだら絶対「?」だと思う。いきなりちょっとだけ登場してくる例の謎の作家も、二時間ドラマだったら明らかに犯人だもん。

 それはまあ差し置いて、怪しい館に怪しい住人(2人だけど)主人公の友達の元気な女の子と、頼れる大人(大学生だけど)黄金の布陣ではあるけれど、主人公も大人も家庭の中での悩みを抱えているというのが暗いなあ。
 あえて暗い部分にも触れることで<現在の子ども>を勇気づけようとしているんだろうけれど、「館シリーズ」らしすぎる燃焼不良な終わり方なので、考えさせられるが故にもう少し掘り下げた方が良かったんじゃないかな(紙面の都合上難しいんだろうけど)

 難問だけ投げかけて、スッキリとした解決がされない点、子ども向けとは言い難い。
 大人向けならそれでも良いけれど、出来れば子ども向けはどきどきして格好良くって、解決はミステリって凄い!って思えるようなもので、それでいて明日への希望が持てる。そんな物語であって欲しい。
 決してそれは子供だましという意味ではないし、むしろ余計な物をそぎ落とす必要がある分、そちらの方が難しいと思う。
 初めて読むミステリが子供だましで陰鬱とした印象で終わったら、きっとその子はミステリがその程度のくだらない物だと思ってしまう。そしてまたそれがミステリの原体験にもなる。
 それを考えれば、大人は自分の書きたい物を子どもでも理解できるように書くだけではなく、最終的に少しでも希望や夢が持てる、そういう書き方をするべきだと思う。それはミステリに限ってではない。
 出来ることならば子どものうちはそういう良質な物語に多く接し、長じてから少しずつ捻りの利いた物を読むようになって欲しい。

 精神的な部分で子どもが未発達だから、あまりひねった物語は避けた方がいいというのもあるけれど、きっと、その方がより楽しいからと言うのもホント。
 捻り=変化球だからさ、ストレートに接してない人に直接変化球投げてもこんなもんか、って思ってしまうだろうから。
 折角読むんだもの、古典的な物もひねりまくった話も、どっちも楽しんで欲しいと思う。

 そして、最近の大人向けの絵本が西村さんは嫌いです。
 特に大人向けってターゲットを打ってないけど、でも明らかに大人向けのが大嫌い。
 何で絵本なのか。活字でも良いじゃないか。童話で良いじゃないか。
 一見子どもに向けた風なのに、夢も希望も含んでいない。わくわくもしない。結局は大人が自分のために書いて、自分が慰めて貰いたいだけの絵本。
 本で慰められるような感受性の強い子どもは、そんな表面的な慰めの言葉で癒されたりしない。
 そしてそういう子どもが大人になれば、そんな浅はかな本に頼らなくても、普通の物語から自分の世界を構築し、気持ちを落ち着けたり道しるべを得るのも容易いと思うんだけどな・・・
 勿論大人向けっぽくっても、実はちゃんと子どもに向けて書かれている本もありますけどね、ごく一部ですけど(そういうのは割と逆に物が良かったりする)

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だって読めないもん・・・ごめんね。

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