<< 足りない足りない。 | main | 週末はこんな感じでした。 >>

「春燈」も良いね。

 こんにちは。睡眠が足りてない西村さんです。

 いやあ、昨夜は22時半にはお布団に入ったんですけどね、うっかり読みかけの宮尾登美子著「春燈」を読み出したら止まらなくて、結局最後まで読み終えたのが朝の5時・・・
 で、ようやく寝る気になってうとうとしたところに地震があったので、実質2時間くらいしか寝てません。おかげで眠い。

 「春燈」は「櫂」から続く、宮尾登美子の自伝的小説。
 「櫂」は母親の喜和の視点でしたが、「春燈」は娘の綾子の視点。なので「櫂」の後半と「春燈」の前半は時期が重なるけど、少々取り上げられる出来事やそれに対する感想が違う。
 「櫂」では長々と綴られていた引っ越しや離婚までの話が「春燈」ではほんの少し。逆に「春燈」では山の別荘について書かれていた部分も「櫂」では触れられていなかったり。
 程々の作家が書いたらきっと、どちらの作でもそれぞれ出来事を逐一書き込んでしまうと思う。けどそうはせず、主人公の心に留まった物事だけを連ねているところに、それぞれの個性を感じたりしました。
 喜和から見たら綾子は守ってやらなくてはならない、嫌われたくない娘なのに対し、綾子から見ると逆に邪魔に思われているのかも、と互いが互いに捨てられたくないと感じている辺り、両作を読んで良かったと思う。
 どちらか片方だけだったら、どうにも切なさ過ぎるから。

 「春燈」の最初、小学生だった綾子が思春期を迎える訳ですが、家業こととかもあって女の部分を見せないように気を張っているのが可愛らしくもあり、可哀想でもあり。
 父親の再婚相手(綾子は使用人としか思っていない)の連れ子兄妹の兄の方が密かに綾子を好きになったりするのだけれど、同い年故に相手が男らしくなっていくのを汚らわしい物の様に感じたり、その子の友達から告白されたりすることもいやらしく感じたり。
 でまた、同じ屋根の下ふすまを隔てただけで暮らしているから、夢うつつに誰かの気配を感じて、もしかして何かされたんじゃ、とびくびくしたりすのが可哀想。
 「櫂」でも「春燈」でも表面的には物怖じしない我が儘なお嬢さんだけれど、本当は見えないところで抑圧されていて、その抑圧は女性じゃないと共感出来ない様な気がする・・・

 やっぱりこれも起承転結がハッキリした小説ではなく、むしろ事件がいくつも起きて、落ちないまま終わるからどこが面白いとはやっぱり言えない。
 しかし所々垣間見える、誰でも悩んだ事のあるちょっとした出来事に共感してしまい、その共感故に止まらないんじゃないかな。

 このシリーズ(?)は「朱夏」「仁淀川」と「岩伍覚え書」が残ってるので、続けて読んで行きたいです。

Comments

Comment Form

日本語を含まないコメントは書き込めません。
だって読めないもん・・・ごめんね。

Remember Me?

Trackbacks

スパム対策のため、内容を確認してから掲載しています。
内容の関連性がないものは載せませんのであしからず。