宮川香山の焼き物のこと。

 この間観てきた宮川香山のこと。

 つい最近「美の巨人たち」で「葡萄ノ蔓二蜂ノ巣花瓶」を取り上げていまして、それで今回の「鎌倉彫と眞葛焼」展をやってる事を知りました(12月27日で終了)
 香山の焼き物はどれも凄いんですが、その中でも「高取釉渡蟹水盤」は前に「美の巨人たち」で取り上げられていて、それからずっと観てみたかった作品。
 その時の番組詳細(http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/080119/picture.html
 今回展示されていたのは初代、二代目の物を合わせて24点。
 一つ一つ見て、凄いなあ、素晴らしいなあ、どうやって作ったんだろう(特に「高浮彫風神雷神花瓶」)と充分堪能した後、最後に渡蟹を見ましたが、あまりに蟹は蟹過ぎました。
 だって蟹なんだもん。
 蟹が貼り付いてるんだもん!
 他の作品は精巧だけれど、やはり作り物にしか見えないのです。粘土で作ってます、ってわかる作りをしている。けれど渡蟹はどこからどう見ても蟹で、陶器には見えない。
 2点だけ作り物であることを証明出来る箇所は、蟹の体の裏側の接合部分と、あと足先に存在するの毛の部分だけ。
 接合部分に至っては、裏側を覗き込まないと見えない。
 粘土で作るだけなら、いくらでもリアルな再現は可能だろう。
 けれどこれは焼き物で、乾燥、焼成すると収縮する。分厚ければその分ひび割れが生じやすいし、中が空洞の物は穴をあけてやらなければ破裂してしまう。
 蟹の胴体は、一体どうなっているんだろう。
 どこかに空気穴があるはずなのに、外から見ただけでは見つからなかった(他の物は見えるところに穴がある)
 そして、蟹をどうやって水盤に接着したのだろう。
 別々に焼いた後に取り付けたものではないのは、接合部分を見たら明らかだけれど、じゃあ粘土の状態でどうやって繋いだのか。指先も入らなさそうなその部分の処理があまりにも綺麗で、これを作った人は本当に人間なのか疑いたくなった。

 あこがれていた渡蟹水盤は思った通り、イヤそれ以上にステキで、そして本当に憧れていたため嬉しくて、少し涙が出た。
 こんなにも「会いたかった」焼き物なんて、今のところ他にはないなあ・・・ 続きを読む>>