「菊籬」と「陽暉楼」が切ない。

 何というか、色々書いておきたいことはあるんですが、どれから書いて良いか判らない・・・
 今一番書いておきたいのはKREVAではなく、またしても宮尾登美子(笑)

 少し前から「菊籬」を読んでいて、この小旅行(と言う程でもない)中に読み終えました。
 短編集で、宮尾登美子の自伝的なものが何編か収録されていて、それを目当てで読んだのだけど、結局記憶に残ったのは一番最初の「彫物」
 芸妓の幸代が自分の肌の黒さ、体毛の濃さという体のコンプレックスと男運の悪さを断ち切るために背中に刺青を入れようと決心する。
 最初は、女は結婚や出産でいずれ刺青を後悔するから彫らない、という彫師に、「男を絶った、子供を産むことも諦めたから男と同じ」と啖呵を切ったけれど、毎週背中を預けているうちに心打ち解けていく。と、どうしても次第に惹かれてくる。
 ついに彫物が仕上がる日、妹の昌代がそれを見についてくるが、会ってすぐに彫師が「彫ってみないか?」と熱心に話し掛けるのに不安になる。
 後日、昌代がどうやら彫師の元に通っていることを知り、負けてなるものか、と今度は背中から陰部に掛けて、繋がった模様を彫って貰うことにする…
 で、そのオチに、とにかくやり切れない気持ちになってしまった。
 うわあ、これは悲しいなあ。
 相手が血が繋がっていないならともかく(話の中では繋がっていないかもしれない、という疑いもある)妹という存在に自分の好きになった人を取られる、というのがとにかく悲しい。
 器量は自分の方が良くても、色の白さというコンプレックスを倍増させている相手である、というのも切ない。

 宮尾登美子は妹が居る訳ではないのに、これは流石だな、と思った。 続きを読む>>