「びっくり館の殺人」と子どもの読書論

 図書館で借りた、綾辻行人「びっくり館の殺人」読み終わりました。
 <かつて子どもだったあなたと少年少女のため>のレーベルなので、活字は大きく、ひらがな多く、ルビ付き。だからあっと言う間(寝る前にベッドの中で読んだ)
 昔々大好きだった、あかね書房のシリーズを彷彿とさせる作りで割と気に入ってます。
 しかし、かつて子どもだったミステリ作家が書いてそのまま本にしているので(普通、子ども向けのミステリ全集などはリライト、ジュブナイルなら子ども向けの作家が書いた物ばかり。その点で、はやみねかおるはかなり異質)<かつて子どもだったあなた>がターゲットで、現在の<少年少女>がちょっと置き去りにされているような気がする。
 特に「びっくり館」は「館シリーズ」であるせいで、下敷きのない子どもが読んだら絶対「?」だと思う。いきなりちょっとだけ登場してくる例の謎の作家も、二時間ドラマだったら明らかに犯人だもん。

 それはまあ差し置いて、怪しい館に怪しい住人(2人だけど)主人公の友達の元気な女の子と、頼れる大人(大学生だけど)黄金の布陣ではあるけれど、主人公も大人も家庭の中での悩みを抱えているというのが暗いなあ。
 あえて暗い部分にも触れることで<現在の子ども>を勇気づけようとしているんだろうけれど、「館シリーズ」らしすぎる燃焼不良な終わり方なので、考えさせられるが故にもう少し掘り下げた方が良かったんじゃないかな(紙面の都合上難しいんだろうけど) 続きを読む>>