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短編「結婚式」

 意欲が湧いたので、久々に創作。
 しかももしかして初披露?なオリジナル・・・もう15年も付き合ってるキャラクターなので、そのうちどこかで長いのを公開したいんだけど。


 かじかんだ指でインターフォンのボタンを押すと、十秒も経たずにドアが開く。
 「お帰り」
 「たーだーいーまー」
 ドアの隙間に体を突っ込むようにしてこじ開け、下げてきた紙袋もドアの内側へ。
 「寒かったろ」
 「うん。凄く寒い。静岡も寒かったけど、東京の方がやっぱり寒いね。手袋してても指先冷たいよ」
 ダイニングテーブルに紙袋を置き、マフラーと手袋を取る。
 「風呂、溜めておいたから入れよ」
 「ホント、やった!」
 タイミング良く準備してくれておいた事に感謝しつつ、差し出された手にコートを押し付ける。
 「ちゃんと肩まで浸かって十数えろよ」
 「ちぇー。子供じゃないよ」
 何か言いたそうに小さくため息が吐かれる。裏返しになったコートの袖を黙って直すのを尻目に、バスルームに向かった。

 「やっと指がちゃんと動くようになったよ」
 風呂から上がり、ダイニングの椅子に座る。
 「アールグレイで良いよな?」
 「うん」
 お茶にこだわりがある訳ではないのを知っていて、それでも必ずと言っていい程確認をされる。いつでも、いつになってもこういうところが国弘は律儀だ。
 「で、式はどうだった?」
 陶器の触れ合う音がして、ティーポットとカップ、何かおやつらしき物が運ばれて来る。
 「勿論、良い式だったよ。ドレスがスゴイ可愛くて、似合ってた。変な男だったらオレ、嫁にやらん!って思ってたけど、いい人そうだった」
 「お前、いつもそれ言うな」
 くすり、と笑って冷やかされる。
 「だって!全員オレの子供達だもん。万沙美にも絶対幸せになって貰いたいし!」
 淹れて貰ったばかりの紅茶のカップに手を伸ばす。
 「ホントに幸せそうで良かったよ」
 カップに鼻を近づけ、その芳しい香りを吸い込む。湯気と共に鼻孔に届く、幸せの香り。




 「そうだ、写真見るだろ」
 有無を言わせずデジカメを手渡した。
 「ところで、コレ何?」
 グラスにスポンジケーキっぽいのとクリームっぽいのとフルーツが入っている。
 「トライフル、もどき」
 国弘は渡されたデジカメの操作をしながら、素っ気なく答える。
 「ホントはスポンジケーキで作って、暫く冷蔵庫で馴染ませるらしいから、もどき。カステラ使ったし、生クリームもカスタードもなかったからヨーグルトだし」
 「へー」
 スプーンで掬って口に運ぶ。
 「うん、美味しい」
 風呂と紅茶で温まった体に、程よく冷たい甘さ。
 「郁。お前、泣いたのか」
 「あっ」 
画面を覗きながらニヤニヤしている。
 「美音の仕業だなー、あいつ勝手にいじってたから」
 新婦の友人でありカメラマンの美音は、写真係として披露宴の間中飛び回っていたのに、良く人様のカメラに悪戯する暇があったと思う。
 「泣き過ぎだろ。この写真酷いぞ」
 面白がるのを通り越して、呆れている。
 「う、うるさいな、良いじゃないか…ホントに…良い式だったんだもん」
 思い出しても涙が出そう。
 どうして他人の幸せを目の当たりにしただけで、こんなに涙が出るんだろう。
 涙を誤魔化すため、忙しなくスプーンを口に運ぶ。
 「幸せだからな」
 「ん?」
 何を言われたか判らなくて、首を傾げた。
 「自分が幸せだから、同じような幸せにたどり着いてくれて嬉しい」
 辛い人を見て涙が出るのは、辛さを知っているから。
 幸せな人を見て涙が出るのは、幸福を知っているから。
 「大切な人だったら尚更、その気持ちは強くなるだろう?」
 デジカメの電源を切り、「ありがとう」と言って返された。
 「本当に幸せそうで良かったな、先生」
優しく笑ってそう言われて、また鼻がツン、とした。
 「あーあ、トライフル食べたらまた体冷えて来た!」
 立ち上がって、テーブルの反対側まで移動する。
 「寒いからぎゅってして」
 腕を引っ張って、こちらを向かせる。
 「もうじき夕ご飯だぞ」
 そんな事を言いながら、優しく腕を回してくれる。
 帰る時間に合わせてお風呂を用意してくれたり、急いでおやつを作ってくれたり。
 「温かい手だな…」
 ほかほかした体とそしてその心。
 それだけでまた泣けてくるくらいに幸福だった――



 この間、このままのトライフル作ったので・・・でもカステラでさらに暫く寝かせたらどろどろになる気がする・・・寝かせるレシピはスポンジケーキでやるべきなんだろうな。
 でもホント、すぐに出来るのでおやつとして便利ですよ(フルーツは勿論缶詰)

 ちなみにお気づきでしょうが、当然のようにこの子らはホモカップル(笑)

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だって読めないもん・・・ごめんね。

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