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「菊籬」と「陽暉楼」が切ない。

 何というか、色々書いておきたいことはあるんですが、どれから書いて良いか判らない・・・
 今一番書いておきたいのはKREVAではなく、またしても宮尾登美子(笑)

 少し前から「菊籬」を読んでいて、この小旅行(と言う程でもない)中に読み終えました。
 短編集で、宮尾登美子の自伝的なものが何編か収録されていて、それを目当てで読んだのだけど、結局記憶に残ったのは一番最初の「彫物」
 芸妓の幸代が自分の肌の黒さ、体毛の濃さという体のコンプレックスと男運の悪さを断ち切るために背中に刺青を入れようと決心する。
 最初は、女は結婚や出産でいずれ刺青を後悔するから彫らない、という彫師に、「男を絶った、子供を産むことも諦めたから男と同じ」と啖呵を切ったけれど、毎週背中を預けているうちに心打ち解けていく。と、どうしても次第に惹かれてくる。
 ついに彫物が仕上がる日、妹の昌代がそれを見についてくるが、会ってすぐに彫師が「彫ってみないか?」と熱心に話し掛けるのに不安になる。
 後日、昌代がどうやら彫師の元に通っていることを知り、負けてなるものか、と今度は背中から陰部に掛けて、繋がった模様を彫って貰うことにする…
 で、そのオチに、とにかくやり切れない気持ちになってしまった。
 うわあ、これは悲しいなあ。
 相手が血が繋がっていないならともかく(話の中では繋がっていないかもしれない、という疑いもある)妹という存在に自分の好きになった人を取られる、というのがとにかく悲しい。
 器量は自分の方が良くても、色の白さというコンプレックスを倍増させている相手である、というのも切ない。

 宮尾登美子は妹が居る訳ではないのに、これは流石だな、と思った。

 「陽暉楼」も読み終えました。
 旅行中に本屋で買った(笑)
 これは自伝的小説ではなく、芸妓となった房子の話。でも実際に存在した料亭をモデルにしているので、主人公にもモデルが居るのかな?
 意に添わぬ旦那しか持てなかった房子が、初めて心から好きになった男の子どもを妊娠していることを知り、それに目をつぶり落籍しようという旦那を断って出産。最後は病気を患って亡くなるというなんとも悲しい話。
 しかしその悲しさよりも、正月にご贔屓さんの家を回る時、好きな男に会えますようにと願掛けしているところや、手紙を書いてみようか、電話をしてみようか、とぐるぐる考えているところとか。他の芸妓にも手を出していた事を知って逆上して飲み過ぎたり、恨んで簪で刺し殺す夢を見たり。
 あまりにも自分とそっくりの感情が書いてあって、胸が痛かった。
 そっくりすぎて、自分の心が痛んでいる気になったのです。これ、自分が辛い時は読めない。

 結局男は若い妹芸妓の方に行ってしまい、一目も会えないまま主人公は亡くなるのだけれど、最後に男のことがどうでも良くなって、楽な気持ちに至れたのが良かったなあ。
 ホントは男が改心して心が通じたら一番良かったんだけど、さすがに宮尾登美子の小説にそんなのが望めないのは判ってるさ(笑)
 芸妓の話だから暗くて悲しくて辛くて、ドロドロしていて、という
のかと思ったけど、そんなことはなくて良かったですよ。
 宮尾登美子の話は着物がたくさん出てくるので、それも楽しい・・・現代が舞台の小説より読んでてしっくり来ます。

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だって読めないもん・・・ごめんね。

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